好奇心と探究心で、起業家の物語に光を当てる/STRIVE リサーチ 藤江なぎ沙

STRIVEby STRIVE

2021年1月、新たにリサーチチームを立ち上げたSTRIVE。リサーチチームは、投資先セクターや注目セクターの市場動向やビジネスモデルの分析、デューデリジェンスのサポート等を行っています。今回は、リサーチを担当する藤江にこれまでのキャリアやスタートアップへの想いを聞きました。
※ インタビュアー:Communications Partner 田原

▼STRIVE リサーチャー 藤江 なぎ沙
2021年にSTRIVEに参画し、リサーチを担当。投資先セクターや注目セクターの市場動向やビジネスモデルの分析、デューデリジェンスのサポートを行うなどキャピタリストと併走。STRIVE参画前は不動産証券、アートオークション、インターネットベンチャーなどの企業で事業企画、IR・経営企画、ベンチャー投資に従事。特にIRでは、経営陣と投資家との信頼関係構築に尽力し、米国金融専門誌「Institutional Investor」のSoftware/Entertainment分野にて2014年にBest IR Professionals に選出されるなどの実績を持つ。スペイン、メキシコの在住経験があり、ラテン文化好き。

経営企画・IRから戦略投資まで。STRIVEジョインまでの道のり

――まずはSTRIVEに参画するまでの経歴についてうかがっていきます。

大学在籍時にスペインに留学し、そのタイミングで海外の新卒採用フォーラムに参加し不動産証券会社に縁を持ち、卒業後に入社しました。入社後はREIT(不動産投資信託)IR、アセット管理などさまざまな業務を担当しました。2年も立たずにリーマンショックという世界規模の金融危機が起こり、新卒社員ながらにビジネス環境の劇的な変化を身を持って体験することになりました。
その後、上場直後でIR(投資家対応)を募集していたインターネットベンチャー企業のグリーに入社しました。

リーマンショックの影響で株式市場全体が冷え込んでいる中で、成長性も収益性も高いグリーは特に注目を受けており、投資家からのIRニーズは極めて高かったですね。決算発表後は毎回月に何百件もIRミーティングをこなしていました。IR担当は会社を代表して投資家からの問いにお答えする立場なので、常に緊張感はありました。できる限り、社内の色々な部門の担当者と直に話をして情報を吸い上げて、肌感覚も含めて伝えられるように心がけました。逆に、株式市場からの声を経営陣や社内に伝えることにも注力していましたね。IR業務を通じた社内外のキーパーソン(社内の経営陣や事業責任者、投資家サイドのファンドマネージャーやアナリスト)の方々とのコミュニケーションは、大きなプレッシャーを感じたものの様々な示唆を頂くとても刺激的なものでした。

グリーではIRだけでなく、アジア地域の海外子会社での経営企画業務のサポートや本社との調整業務、ベンチャー投資にも携わりました。一時はグリーを飛び出してアートオークションの会社でも働いていました。親族の多くがアート関連の仕事をしておりずっと興味を持っていたので、私の我儘で自由にさせてもらっていた感じですね。今でも、どの会社の同僚達とも仲良くさせて貰っており、とても有り難く思っています。

 

――ベンチャー投資業務も担当されていたようですが、それまでの業務との違いはありましたか。

IR部門では投資される側として投資家とコミュニケーションをする、ベンチャー投資部門では投資する側としてスタートアップ企業とコミュニケーションをする、ということで逆の立場になるんですよね。前者は伝える力、後者は聞く力が主になり、コミュニケーションの方法としては違いが生じますが、根っこの部分ではより良く理解し合いたいという気持ちが共通しているので、大きな観点ではあまり違いはないように思いますね。

両方の場数を踏んだことで、投資家が咀嚼しやすいような伝え方や、起業家が答えやすい聞き方などの巧拙を学べたことは自分にとっては大きなプラスだったように思います。

 

――藤江さんはIRを軸に幅広い領域に携わられてきましたが、スタートアップ業界に興味を持ってSTRIVEにジョインした理由をお聞かせください。

スタートアップ業界には変化を楽しむことができる人が多く、また、新しい技術や工夫で社会をより良くしようという情熱を強く持った人が多くいるのが魅力的ですね。人も事業もお金もダイナミックに動き、常にワクワクするような変化が起きています。グリーを退職した後に夫の仕事の都合でメキシコに移住していたのですが、コロナ禍の影響で日本に帰国したところ、ちょうどSTRIVEでリサーチ担当を探し始めたタイミングだったので、自分もスタートアップ業界に再度関わりたいと思い応募をしました。改めてスタートアップ業界の周辺に身を置いたところ、変化の速さにびっくりすることばかりですが、新しい気づきや発見の連続でいつも楽しく過ごさせてもらっています。

 

――STRIVEを通して、リサーチとしてどのようにスタートアップ業界をサポートしたいとお考えですか。

IR担当だった頃、ある投資家の方と企業と投資家の望ましい関係性についてざっくばらんに議論をしたことがありました。その際、企業の価値は保証のないものだからこそ、企業と投資家が夢を分かち合い、協力してその価値を高めていけるような関係性が理想だという意見が出ました。「夢を分かち合う」という表現には、双方向の愛情を感じさせるし、未来志向の時間軸も含まれているし、言い得て妙でとても良いなと思いましたね。

STRIVEでも、ベンチャーキャピタルとスタートアップが「夢を分かち合って」成長できるように、リサーチとしてサポートしていきたいと考えています。スタートアップの領域によっては、その魅力度に反して、技術の先進性や複雑さなどから、あまり世間の認知が進んでいない領域もあるように感じています。リサーチとしては、そのような領域の素晴らしい魅力を「深すぎず、浅すぎず」くらいの丁度いい情報量でまとめ、より多くの人たちにお伝えしたいと思っています。そういった発信を通じて、その領域で活躍するスタートアップが、世間から注目を集めるきっかけになれば嬉しいですね。リサーチのnoteを発信する際は、「何か間違ったことを書いていないか…」といつもドキドキしていますが、その領域の方から「わかりやすい」と評価や拡散をしてもらうと、お役に立てていることが実感できてとても嬉しいです。

▼STRIVE noteアカウント
https://note.com/strive/

――noteで取り上げる内容はどのように選定されているのでしょうか。

キャピタリストから意見を聞いて、貰った候補の中から決めています。ある程度市場規模が大きそうな産業で、何となくわかっていそうなんだけれど、いまいち理解できていないという領域を選んでいます。今まで調べたものでは、スマートシティ、脱炭素、NFT、宇宙、メタバース、保険などがあります。どの領域も前提知識がなくゼロからなので、毎回かなり、かなり大変です(笑)。

 

――藤江さんがリサーチャーとして注目している領域はどこですか?

親族にアートの制作で生計を立てている者が多いため、アートビジネスや、広くはクリエイターエコノミー関連の領域には自然と目が向きますね。ブロックチェーン技術を用いたNFTといった、クリエイターによるマネタイズ可能性が広がるイノベーションなどは興味深く見ています。リアルでもバーチャルでも、アートやコンテンツは、大きな感動や心の安寧をもたらしてくれる人の暮らしに欠かせないもので、特にコロナ禍でその重要性は再認識されているように思います。それらを生み出すクリエイターや、世に広めるマーケター、効率的で公平な流通システムのオペレーターの皆さんに、収益が還元していくような仕組みが整っていくと嬉しいですね。

また、宇宙空間を利用した超高速飛行など、生活が一変するような技術はワクワクしてしまいますね。現在、日本からメキシコへのフライトは13時間ほどかかりますが、それが1時間以内になるかもしれない、と思うとワクワクが止まりません(笑)。少し前に宇宙ビジネスについて調べたのですが、自分が考えていたより宇宙は身近になっていると知ってびっくりしました。私達の孫くらいの世代では、民間人の宇宙旅行はもはや物珍しいものではなくなっていきそうです。多くの起業家やスタートアップの情熱や努力によって、こんなにもドラスティックな変化が起こることに感動しています。

 

――投資先に向けてのサポートで、取り組みたいことはありますか?

投資先が調達をするタイミングでは、潜在的な市場の大きさをある程度丁寧に伝える必要があると思っています。そういう情報を探したりまとめたりするのには手間がかかると思うので、ニーズがあればお手伝いできるかと思います。また、上場前のスタートアップの方が、具体的なIR業務について知りたいなどのニーズがあれば、業務内容や体制作りなど含め一定の情報共有ができるかと思います。

 

――最後に、今後のリサーチチームの展開について教えてください。

パンデミックの状況次第ではありますが、足を使って色々な業界の人たち話を伺いに行きたいですね。現状のリサーチ業務は統計データや調査レポート、ニュースやSNSなどの読み物からのアウトプットが中心になっているので、実際に業務に携わっている方たちにお話を伺って、より手触りのある内容にしていければいいなと思います。リサーチのアウトプットして、スタートアップ経営者が見えている「夢」の片鱗を共感してもらえるようになることが理想です。