【 #STRIVE勉強会 】SaaS企業の「シリーズA」成功の道。PR Table、A1A、HERP、カケハシが登壇
支援先の方々向けに毎月実施している「STRIVE勉強会」。専門分野のプロフェッショナルの方を招き、各社が実践的に使えるノウハウ・スキルを身につけられる講義とワーク型のイベントです。
2020年2月のテーマは「SaaS企業のシリーズAファイナンス」。SaaS企業が、シリーズAを調達するために必要なこととはーー。
今回ゲストとしてお越しいただいたのは、株式会社PR Table CEOの大堀航さんと大堀海さん、株式会社カケハシ COOの中川貴史さん、株式会社HERP CEOの庄田一郎さん、A1A株式会社 CEOの松原脩平さん。
自らの経験を振り返りながら、シリーズAファイナンスについてお話いただきました。一部の内容をピックアップして、レポートしていきます。
国内SaaS企業のIPOまでの資金調達。資本効率が良いといえるバランスは?
最初に、STRIVE インベストメントマネージャーの四方智之より、「国内SaaS企業のIPOまでの資金調達状況」について解説しました。
上記の表は「国内SaaS企業のIPOまでの資金調達額とARR」についてまとめたものです。
資金調達額とARRのバランスを保てているのが、Sansan株式会社。名刺管理サービスを提供してユニコーン企業となり、2019年6月に東京証券取引所マザーズに上場しました。そんなSansanのIPOまでの累計調達額は、約114億円。ARRとの比率を見てみると、ほぼ1:1といえます。
クラウド管理ソフトを提供するfreee株式会社は、ARRよりも調達額が大幅に上回っています。約160億円の累計調達額で、2019年12月に東京証券取引所マザーズに上場しました。
ARRが40億円以下で上場している企業を見てみると、freee株式会社のように調達額の比率が高いのは、株式会社マネーフォワード。成長率を重視している印象を受けます。一方で、資金調達額とARRの比率が近いのが、Chatwork株式会社・株式会社ユーザベース・株式会社カオナビ・株式会社チームスピリット・ウォンテッドリー株式会社です。
資本効率が良いといえるのは、資金調達額とARRの比率が1:1に近いこと。特に、バランスが良かったのは、Sansan株式会社とChatwork株式会社でした。「どのくらいのARRで上場するか」は各社違いますが、IPOまでに1:1の比率に近づけられると良いでしょう。
シリーズAを経験した4社による、パネルディスカッション
次に、シリーズAの資金調達を経験してきたSaaS企業の4社が登壇。「SaaS企業のシリーズAファイナンス」をテーマにして、パネルディスカッションが開かれました。
(左から、大堀海さん・大堀航さん・松原脩平さん・庄田一郎さん・中川貴史さん)
- 株式会社PR Table/CEO 大堀航さん・大堀海さん
ブランディングを目的として、企業のストーリーやノウハウを発信するプラットフォーム「PR Table」を提供しています。現在は、シリーズA調達済み。シリーズAの調達額は4.2億円、累計調達額は6.0億円です。
- A1A株式会社/CEO 松原脩平さん
製造業購買部門向けのクラウド見積査定システム「RFQクラウド」を提供しています。現在は、シリーズA調達済み。シリーズAの調達額は3億円、累計調達額は3.6億円です。
- 株式会社HERP/CEO 庄田一郎さん
採用管理プラットフォーム「HERP Hire」と、タレント管理プラットフォーム「HERP Nurture」を提供しています。現在は、シリーズA調達済み。シリーズAの調達額は4.6億円、累計調達額は5.1億円です。
- 株式会社カケハシ/COO 中川貴史さん(右)
電子薬歴システム「Musubi」を提供しています。現在は、シリーズB調達済み。シリーズAの調達額は9億円、累計調達額は37億円です。
ーー調達額はどうやって決めましたか?
松原さん(A1A株式会社):弊社は、バーティカルのSaaS企業で、プロダクトを作るのに時間がかかると想定していました。
なぜなら、既存ソフトウェアの空いているポジションに入ろうとしていたため、顧客からの要望が高いから。また、大手上場企業などの誰もが知っている会社に導入されており、プロダクトの完成度を高めなければならなかったからです。
シリーズAを検討する段階では、まだプロダクト機能が足りておらず、目指す基準に到達していない状態で。そのため、「プロダクトができるまでどのくらいかかるのか」という期間から逆算して、3億円を調達しました。
実は、調達額については、VC数社から「もうちょっと調達したら?」とオファーをもらっていたんです。しかし、「2年あれば3億円で足りるはず」と感覚で思い、結局追加をしませんでした。今振り返ると、「結果的に予想外にお金がかかった」と感じています。
中川さん(株式会社カケハシ):私も「予想外にお金が必要」という松原さんの話に共感します。
弊社は、医療業界のプロダクトを提供するSaaS企業なので、システムが重たいのが特徴です。40名を超える大所帯のエンジニアチームが、日々システム開発を進めています。
オンボーディングやカスタマーサクセスも重たく、プロダクトを成長させるためには、多くの人手を採用しなければなりません。そのため、大きなお金を投資する必要がありまして。ベータ版に行くまでに、数億円使ってます。
シリーズAでは、最初「5〜6億円あれば足りるはず」と思い、余裕をもって9億円を調達しました。今思うと、調達額が当初考えていた5〜6億円だったら、ぜったいに足りなかったでしょうね。
キャッシュバランスがギリギリになると、未来の数字ではなく、足元の事業の数字でさえ作れなくなります。そのため、「絶対足りるだろう」という金額を調達しておくのが、私からのアドバイスです。
ーー資金調達のために行った取り組みはありますか?
庄田さん:もともと弊社は、エンジェル投資家からしか投資を受けていませんでした。そのため、シリーズAの資金調達のために動きはじめたときは、20社くらいVCを回りました。レンジに入るようなARRがなかったため、自分たちの成長をVCにとにかくアピールしていましたね。
毎週やっていたのは、金曜日に「MRR」「トランザクション」などの数字をまとめて、面識のある全VCにメールで送ること。メルマガのように送り続けましたよ。成長していることをこまめに数字で伝えることで、毎週気に留めてもらえるし、投資判断のプラス材料にしてもらえます。
結局、調達期間中にMRRが4倍ほど伸びたので、調達活動の後押しになりました。
ーーVCに現状の数字を伝えるとき、意識していたことはありますか?
大堀さん(株式会社PR Table):あまり数字を良く見せようとすると、痛いところを突かれそうだったので(笑)、視点を変えていましたね。来ているリードの数を提示して、「なぜリードが来ているのか」を考察するプレゼン資料を作っていました。
弊社が打ち出す世界観やコンセプトに対して、世の中からどんな反応が来ているのか。なぜ、サービスが刺さっているのか。そのあたりの解像度を高めていた記憶があります。
現在は、シリーズBを進めている最中です。戦略がガチッとハマり、最初のキックオフミーティングで決めたKPIはきれいに達成しています。考えていた構想通りなので、ありがたいことに、最高のシリーズBでの資金調達が望めそうです。
ベンチャー企業の成長に欠かせない「資金調達」。SaaS企業のシリーズAファイナンス
資金は、会社にとっての心臓部分。なくては存続できないものです。ベンチャー企業がステップアップするにあたり、資金調達が成長を加速させる「要」になってくれるでしょう。
シリーズAの調達を進める段階において、「どのくらい調達しておくべき?」「調達するためにやるべきことは?」など、迷うポイントは多いはず。
どのようにして、シリーズAの資金調達を進めていくべきか。悩めるSaaS企業の起業家やCXOの方は、今回登壇した4社の話を参考にしてみてはいかがでしょうか? 弊社でも相談を受け付けているので、気軽にご連絡くださいね。