みずほ銀行主催「サーキュラーエコノミー(資源循環)× X-Tech Pitch」講演レポート

STRIVEby STRIVE

みずほ銀行が主催する「X-Tech Pitch(クロス・テック・ピッチ)」は、各テーマに沿ったイノベーション企業と大企業のマッチングを目的としたピッチイベントです。今回は、2022年5月に開催された「サーキュラーエコノミー(資源循環)×Tech Pitch」の基調講演に登壇したSTRIVE リサーチ 藤江による講演の様子をお届けします。

 

サーキュラーエコノミーとは

環境省による定義だと「資源投入量・消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化等を通じて付加価値を生み出す経済活動」というものです。資源・製品の価値の最大化、資源消費の最小化、廃棄物の発生抑止等を目指すとされています。

このサーキュラーエコノミーというトピックが出てきた背景には、持続可能な発展に向けた大きな時代のうねりがあります。

21世紀に入り、社会格差や人権問題、気候変動、環境破壊といった社会課題を、SDGsやパリ協定など国際的な枠組みで解決していこうという流れが加速しています。その中で、投資家側のESG投資、企業側のサステナビリティ経営、経済活動全体としてのサーキュラーエコノミーへの移行が急速に進み、これらの動きをサポートする新たな技術として、「IoT、AI、ビッグデータ、ロボティクス」が活用されています。

これまで続けられてきた大量生産・大量消費・大量廃棄型といった一方通行の線型経済(リニアエコノミー)は、今後資源量の制約などによって続けていくことが難しくなるでしょう。そのため、プロダクトチェーンの全体デザインにより循環経済(サーキュラーエコノミー)を実現し、資源量の制約を受けずに持続的な成長を目指すことが望まれているのです。

サーキュラーエコノミーでは、これまで無駄とされてきたものを富に転換することができると考えられています。その規模は、アクセンチュアの試算によると、無駄の活用により生まれる2030年の市場規模は4.5兆ドルともされています。

サーキュラーエコノミーを実現しているテクノロジー・ビジネスモデル

サーキュラーエコノミーを実現する様々なテクノロジーの実装はすでに始まっており、それらテクノロジーを用いた新たなビジネスモデルが続々と誕生しています。

テクノロジーとしては、IoT技術や新たな製造、リサイクル技術の実装が進んでいます。。また、アクセンチュアによるサーキュラーエコノミーの主要なビジネスモデルとしては、(1)PaaS(モノのサービス化)(2)シェアリング(3)製品寿命の延長(4)資源回収とリサイクル(5)原材料の循環の5つがあがっています。これらのビジネスを、大企業だけでなく、スタートアップも積極的に取り組んでいっている状況です。

循環経済関連のスタートアップの資金調達も活発化

サーキュラーエコノミーの実現に携わるスタートアップの資金調達もグローバルで非常に盛んになっています。例えば、大部分が持続可能性への取り組みに集中しているとされるリテールテックと呼ばれる分野で、資金調達額が2020年から2021年の1年間で132%増と倍以上の伸びを見せるなど、注目度の高さを伺うことができます。

すでに上場を果たしたスタートアップや、ユニコーンも出てきています。上記の図の右側に挙げたうち、ThredupとRent the Runwayの2社は昨年米国で上場しました。3番目に挙げたBackMarket、下から2番目のApeelはユニコーンの評価を受けているスタートアップです。

では、日本の状況はどうなっているのでしょう。国内では、2000年以降、リサイクル法など法制度の整備が進んだことにより、廃棄物処理や資源の有効活用をする市場規模自体は大きく伸びています。それにより、廃棄物量の低減は進展を見せていますが、一方で社会に提供する付加価値の向上は今後の課題点であります。消費者、投資家、産業側の主体がそれぞれ役割を果たしていくことが求められているのです。

そうした中、日本においてもサーキュラーエコノミービジネスを手掛けるスタートアップの中から、リユースのメルカリ、サステナブル素材のSpiber、TBMなどユニコーンが登場しています。また、本日ご登壇のスタートアップの方々を含め、各分野で今後のサーキュラーエコノミーを力強くリードしていくであろうスタートアップが続々と生まれています。
(注:本イベントでは、ジモティー、ウィファブリック、Bioworks、第一精工舎、バイオマスレジン、ファーメンステーションが登壇しました。敬称等略)

循環なき経済は罪悪であり、経済なき循環は夢物語である

最後に、藤江は経済産業省の循環経済ビジョン2020の一説を紹介し、締めとしました。

「循環なき経済は罪悪であり、経済なき循環は夢物語である」。社会課題が深刻化していく中で、循環なき経済は罪悪であると言えます。ただ、経済のない循環は夢物語で終わってしまう。そうならないためにも、大企業の皆様、スタートアップの皆様、そして我々投資家が手を携え、サーキュラーエコノミーの実現推進への貢献をしていければと強く思っています。