キャリアの意思決定に伴走し支援するパイオニア ポジウィル 金井芽衣氏 × STRIVE 堤・髙田

投資先by STRIVE

キャリアをはじめとした人生の意思決定をサポートする「POSIWILL CAREER」を運営するポジウィル株式会社。2020年10月の資金調達を経て、事業拡大・採用強化をより加速しています。ポジウィルの考えるキャリア支援とは何なのか、目指す未来像とは。ポジウィル 代表取締役 金井芽衣氏とSTRIVE 代表パートナー 堤、インベストメントマネージャー 髙田に語り合ってもらいました。

キャリアトレーニング市場を牽引するポジウィルの事業

髙田:キャリアの意思決定をサポートしようと思うに至った原点は何だったのでしょうか?

金井:「キャリアカウンセリング」の存在を知ったのは、保育士になろうと思って進学した短大時代でした。実習で養護施設に行くことがあり、虐待を受けている子どもやその親について知り考えるなかで、自分の人生をどうしていきたいのか考えられない人が多いと思ったんです。そこで、人生の大きな割合を占める働き方を変える仕組みを考えたいと思い、大学に編入しました。

 堤:キャリアカウンセリングは日本ではまだメジャーではありませんが、どのように立ち上げたのでしょうか?

金井:キャリアカウンセリングの必要性を確信していた一方で、日本人は「カウンセリング」という言葉に抵抗があるのではないかとも思っていました。そこで、Twitterを活用してキャリア関連のキーワードごとの反応を検証してみたんです。すると、キャリアのカウンセリング、コーチング等のワードのなかで、「相談」のワードが反応が良いことがわかりました。

最初にこの事業は伸びるなと思ったタイミングは、2週間100人を対象に無料でキャリア相談を実施した時です。1~2割の人から「お支払いするので今後も相談に乗ってほしい」と言われ、お金を出してまで利用したい人はいるんだなと実感しました。

堤:この時に運営を開始したサービスが、「そうだんドットミー」?

金井:そうです。「そうだんドットミー」は、2018年8月に行った最初のファイナンスを経てリリースしました。その後、全てオンラインで完結する短期集中型のキャリアトレーニングサービスとして、「POSIWILL CAREER(旧:ゲキサポ!キャリア)」の運営を開始しました。STRIVEさんが投資してくださったのは、「POSIWILL CAREER」のリリース前でしたでしょうか。

髙田:そうですね、2019年の9月頃でしたね。当時の主力事業は「そうだんドットミー」で、「POSIWILL CAREER」は中長期戦略を模索している時期でした。

金井:2019年2月頃に、投資家の方から意見をいただく機会があったのですが、「このサービスは伸びないよ」とさんざん言われたんですよ(笑)。

髙田:未開拓の巨大な潜在市場があるものの、キャリア領域におけるB2Cトレーニングサービスのパイオニアとしてどこまで成長できるか見えないところでしたからね。ただ、客観的に独立した立場からキャリアの相談を受けるサービスについては、ニーズがあると思っていました。僕自身も実体験として、そうした立場で相談に乗ってくれる相手を見つけるのは難しいことを痛感していたので。

堤:実は、僕は2年半ほどエグゼクティブコーチングサービスを利用しています。良さを痛感している一方、正直単価は高いんですよね。より安価で伴走してもらえるサービス、特にキャリア領域に絞ってサービスを展開することは、キャリアが急激に多様化し、将来への不安が拡大する現代社会においてニーズがあると思いました。

髙田:サービスの利用者層はどのような方々ですか?

金井:男女比は半々くらいで、年齢層は20代から30代前半までの利用者が多いです。当初のターゲットは、面接を通過できない人をイメージしていました。しかし、実際には転職を決断する以前の課題を持っている人に多く利用されています。例えば、転職するかどうかを含めて漠然とキャリアに悩む人、携わりたい仕事や目標が明確にない中でキャリアプランに悩む人等です。

「POSIWILL CAREER」で相談した結果、内定を承諾すると決める人もいれば、内定を辞退する人もいます。利用者からは、「自分のキャリアの方向性がはっきりわかった」という声を多くいただいています。

髙田:「POSIWILL CAREER」は、そこが強みですよね。 

堤:エージェントビジネスの場合、どうしてもそこがニュートラルにできなくなりますからね。ポジウィルが重要視しているのはキャリアの意思決定であり、転職させることではない点は大きな特徴だと思います。

金井:ポジウィルの価値は、一般的なコーチングとは異なり、ファクトベースで情報を提供しながら、かつこちらの価値観を押し付けないところにあると思っています。さらに、判断に至るまでの生い立ちも含め、過去の出来事にもしっかりと向き合います。だからこそ、自分の生き方の道筋が見えてくるのではないでしょうか。

現代には、アイデンティティの確立ができていない人が多いと感じています。自分を変えるためには、まず自分に向き合う強さが必要なんです。「POSIWILL CAREER」がそのきっかけになれればいいなと思います。

STRIVEの3号ファンドで始めたシードプログラムからシリーズA投資に至った投資先はポジウィルが初。ポテンシャルの高さが決断の理由

金井:STRIVEさんから見たポジウィルは、どんな印象でしたか。

堤:3号ファンドから、STRIVE SEEDというシードプログラムに基づいて、積極的にシード投資を行っているのですが、ポジウィルには最初に2019年9月にシードの段階で投資させてもらいました。市場性や事業モデル、経営チームに可能性を感じましたし、ユーザーの悩みをヒアリングしていく過程で、さらに大きなビジネスが生み出せるのではないかというのが、投資家としての判断でした。

髙田:STRIVEがメインとしている投資領域はシリーズAですが、ポジウィルは3号ファンドでシードからシリーズA投資に至った初めての事例です。今回のシリーズAでの追加投資を判断した理由は、なによりトラクションが急速に伸びており、ここでアクセルを踏むことで事業の成長をさらに加速させることができる、そういう重要なタイミングだと感じたことです。最初に投資させていただいて以降、結果を数字で示すことに対する金井さんのすさまじいほどの意欲の高さを見てきたので、追加投資をすればさらにこの事業を成長させてくれるだろうと、そこに関しては、ゆるぎない確信がありました。

また、ポジウィルは、キャリアトレーニング領域のパイオニアでありトップランナーです。当時、類似ビジネスが出てきたタイミングでしたが、このタイミングで追加投資して事業を加速させることで、他サービスが追従できなくなるだろうと考えました。

金井:おふたりがいつも「絶対大丈夫」と言ってくださるたびに、ゆるぎない自信がすごいなと思っています。もちろん私も信じていますが、悩むこともあるので精神的に心強いです。約1年毎月ミーティングしているなかで、「おふたりに数字の報告をしなきゃいけないから伸ばさなきゃ!」と思えている部分もあるんですよ(笑)。

堤:それ、あるだろうなと思っていました(笑)。

金井:いい意味でのプレッシャーをかけていただきながら、味方でいてもらえるのはありがたいです。私に欠けている部分もサポートしていただいていて、本当に私ひとりだとできなかったと思っています。

髙田:僕たちが今注力していることは、組織面の再構築とオペレーションの型化です。STRIVEのタレントパートナーも採用・組織構築の支援に加わり、事業計画やKPIの策定を含め、定期的にディカッションを行いながら進めています。シリーズAの調達が完了し、これからさらに成長を加速させるフェーズに入るわけですが、アクセルを踏む前の準備段階が非常に重要と考えています。組織面と運営面で土台が固められていなければ、事業を再現性のある形で成長軌道に乗せることは難しいですからね。

金井:ありがとうございます。人的な部分、知識的な部分ともに助けられています。また、本質から少しそれたときに軌道修正していただけるのもありがたいです。

堤:金井さんは典型的な起業家ですからね。

金井:ゼロイチが好きなので、「これ、できそう」と思ったら新しく手を広げたくなるんですよね。そういう時に、今はキャリア領域に絞るべきだと指摘してもらえます。いい意味で上司みたいな存在だと感じていますし、私には必要な存在です。

キャリア領域の土台を固め、将来的には人生の意思決定に伴走する企業へ 

髙田:STRIVEでは、バリューアップチームと連携して、今後も事業戦略の策定や採用、資金調達に関して最大限支援させていただきたいと思っています。金井さんは、今後どういった未来を見据えていますか?

金井:海外にはビジネスコーチング市場があり、規模は1.2兆円以上と言われています。日本ではコーチングサービスを提供している企業が少ないので、ポジウィルがナンバーワンのポジションを確立させたいです。

また、キャリアの急激な多様化、正解のない将来への不安拡大により、キャリアだけに限らず、結婚や離婚、育児や介護、教育など、さまざまなライフイベントにおいて「相談」のニーズが存在していると思っています。将来的には、人生の転機に伴走する“相談窓口” のような存在を目指しています。

堤:そのためにも、まずは土台となるキャリア領域をしっかり固めたいですね。起業家から経営者に変化していくのをサポートするのが、僕たちの役割でもあると思っています。起業家にとっての最大の理解者でありながらも、なれ合いの関係ではなくいい意味での緊張感を保って支援していきたいです。金井さんが経営者として成長することが、ポジウィルの成長にも繋がるはずですから。