VCと二人三脚で歩んできたミナカラが創る「オンライン薬局」の世界 ミナカラ 喜納信也氏 × STRIVE 根岸

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「ヘルスケアをもっと身近で感動的に」を経営理念に掲げ、薬剤師の知見にテクノロジーやデザインを掛け合わせたビジネスを展開している株式会社ミナカラ。2020年8月には3億円の資金調達を果たし、10月には製薬メーカーとのプライベートブランド医薬品の共同開発プログラムを本格始動させます。

ミナカラが目指す「オンライン薬局」とは何なのか、また、オンライン薬局の発展により起こる変化にはどういったものがあるのか。ミナカラ 代表取締役の喜納信也氏とSTRIVE パートナーの根岸奈津美がお話します。

 

セルフケアに必要な調べる・選ぶ・購入する・相談するをワンストップで提供するオンライン薬局「ミナカラ」

根岸:まずは、ミナカラの事業内容をうかがいたいと思います。

喜納さん(以下、喜納):ミナカラは、「一人ひとりにとって正しいセルフケアを届ける」を事業テーマとして掲げ、オンライン薬局を運営しています。
実際に薬局に足を運びにくい方でもオンライン上で、ユーザーが自分で判断して薬を入手、使用し、治るまでのプロセスをワンストップで提供できる世界を目指しています。
ただ薬を選んで買えるだけではなく、いつでも薬剤師に相談できるアフターサービスも提供していて、特にチャット機能はお客様の満足度が非常に高いです。
また、データを活用しながらプライベートブランドの医薬品開発も手掛けています。
一般用医薬品(以下、市販薬)の商品開発をしている一番の理由は、オンラインに合った商品設計とユーザー体験を提供したいからなんです。

根岸:具体的にはどういうことでしょうか。

喜納:既存の市販薬はリアル店舗での陳列販売を前提に商品設計されていることが多く、店頭で目立つように必要以上にパッケージが大きかったり、光るデザインになっていたりします。特にサイズに関しては、数ミリの違いがユーザーの送料負担を減らすことに繋がります。オンラインにはオンラインに合った商品設計が求められるべきだと思っています。

根岸:そうですね。オンラインならではの商品設計という視点のほかに、お客様の真のニーズに応えるための商品設計という議論もしましたよね。

喜納:市販薬の商品開発プロセスが数十年変わっておらず、顧客データやニーズが製薬メーカーに届いたり還元されていないことから、サイズや形状などデザイン課題をはじめ、ユーザーの声に寄り添いにくい構造になっていたことが課題だと思っています。実際にユーザーから「こういった剤形にしてほしい」や「使用期限中に使いきれないので小さいサイズにしたい」といった声も寄せられています。こうしたユーザーの声を商品にも反映できるように、製薬メーカーにユーザーニーズやマーケティングノウハウを提供し、薬剤師としても提案しながら商品開発を進めています。

根岸:ミナカラの創業のきっかけは何だったのでしょう。

喜納:ひとつは、前職までの経験や体験を通してヘルスケア✕B2Cビジネスに取り組みたいと思ったこと。もうひとつは、人生を一発逆転したい&転職希望先だった会社を見返したい気持ちからくる勢いですね(笑)。

根岸:詳しくお聞きしたいです(笑)。

喜納:前職では、業務コンサルや、カスタマーサポートセンターの立ち上げ等を通し、上場企業を中心に百社以上の業務改善や運用支援に携わり、社内のマネジメント業務にも携わっていました。同時に、副業として調剤薬局でも働いていました。大企業での業務改善の仕事と比べ、家族経営が主体で小規模な調剤薬局での現場業務ではオペレーションの非効率さをひしひしと感じていて、薬局が提供する医療サービスはもっと良くできる余地が大きいと感じていたんです。
また、薬局で患者さんと接する中でB2Cサービスに携わりたいという思いも強くなりました。医療系スタートアップはB2Bサービスが大半で、B2Cで切り拓いていく例が少ないと思っていました。ただ、その時点で起業する気はなかったので、B2Cの仕事を見据えた転職活動をしたんです。

根岸:ふたつ目の理由に繋がるわけですか。

喜納:「この会社なら」と思った会社とご縁がなくて。僕がやりたい「医師に相談しながら市販薬を売る」ビジネスが、その企業の事業に支障があるという、致し方ない理由ではあったんです。ただ、前職で活躍してた気になってましたが、転職に失敗して「このままでは僕の社会人としての価値もキャリアも終わりかもしれない。何か一発逆転しないとやばいんじゃないか。」など勝手に自分で自分を追い込みました(笑)悔しい思いをして落ち込んでいましたが「これではダメだ」と思って、3ヵ月……半年後くらいには創業しました。2013年頃のことです。

 

STRIVEが感じた、市場・事業・組織がうまくフィットしたミナカラの力

喜納ミナカラに投資を決めた理由は何だったのでしょうか?

根岸:ミナカラの事業が市販薬営利企業に関わる領域だったことが理由のひとつです。保険医療は制度や政治の影響を色濃く受けますし、制度ひとつ動かすにも時間がかかるので、難しいなと思っていました。また、私自身の過去の経験から、市販薬やドラッグストア領域の市場の大きさも理解していました。 

喜納:保健医療に対する制度面の障壁はその通りですね。ミナカラとしては2015年頃から医療用医薬品(以下、処方薬)の物流に関する規制緩和のために国に働き掛け、国家戦略特区での実証活動なども通し、昨年ようやく薬機法改正にこぎ着けました。ただ、新型コロナウイルスの流行によって、今までの労力は何だったんだというレベルで法改正は一気に進みました(笑)。

根岸:投資したもうひとつの要因は、強いチームであることです。既存プレイヤーであるドラッグストアには、エンジニア人材はなかなか存在しません。逆に、ネットに強いチームだけだと薬剤師をうまく巻き込むのが難しかったりします。
ミナカラには薬剤師もエンジニアもいて強い組織が存在します。特に、採用後に薬剤師さんを育成してネットビジネスを理解した薬剤師チームを作れているのは強いと思います。喜納さん自身もエンジニアであり、薬剤師ですもんね。
喜納さんがピッチイベントでお話されていたことが印象的です。「僕はゲームやインターネットサービスが好きです。これだけ世の中がインターネットによって便利になっているのに、薬の領域は遅れています。薬剤師が持っているノウハウも、一般の人に伝わらないままになっているんです」と。 

喜納:ありがとうございます。ただ、あのときは、ミナカラが薬の宅配事業も手がけていたのでエクイティストーリーがシャープになりきれてなかった時期でもありました。

根岸:私には「メディアの会社です」とおっしゃっていました。当時、医療系メディアは他にも存在しましたが、ミナカラは薬剤師を集めて真摯にコンテンツを作っているのがいいなと思いました。あとは、データベースです。薬は厚労省が管轄したデータがありますが、市販薬はまとまったデータベースがありません。ミナカラは、市販薬のデータベースを構築していて、ゆくゆく大きな強みになると思いました。メディアのデータもありますよね?

喜納:記事ごとの購入傾向や商品ごとのクリック数など、ミナカラならではのインサイトが溜まっていました。 

根岸:ディスカッションする中で、次のラウンドではメディアコマースとしてエクイティーを組み立てていこうという話をしましたよね。インターネットで薬を販売するビジネスなので、データをもっていることは強いなと思いました。販売・商品開発の双方に活かせるので。

 

STRIVEと乗り越えた、コマース事業への方向転換の時期

喜納:こう言っていただいているんですが、実はメディアの立ち上げはインキュベイトファンドの村田さん(VCの方)と考えたアイデアなんです。創業時に30~40種類くらいの事業計画を立てて、村田さんから事業アイディアやアドバイスをもらい、事業内容を決めていきました。

根岸:喜納さんはVCを上手に活用される印象があります。喜納さんからディスカッションの提案やアイディアの壁打ちのお声がけをいただくことが多いです。

喜納:創業前から、VCと事業を作っていきたいなと思っていました。医療分野でスケールするテーマ、社会にインパクトを起こせるテーマに取り組みたいと創業前から決めていました。また、成功例、失敗例含め多くのケースを見ているVCを巻き込んで検討していくほうが早く事業成長するだろうと考えていたので。そのほか、医療領域での成功事例はB2Bサービスが多く、B2Cサービスでは何をやれば成功するのかわからなかったというのもあります。根岸さんには、本当によくディスカッションに付き合っていただいています。

 

根岸:投資後に、コマースに思い切り寄せていこうというタイミングでは、戦略からハウツーまでかなりがっつり話しましたよね。

喜納:自社でコマースを回していくことになったので、それまで行っていなかった、仕入、物流、マーケ、CSを垂直立ち上げをすることになりました。コマースビジネスの経験者が一人もいなかったので、初期の立ち上げ戦略から、ツールの選定やコマースの定説など、その時期は各VCの方とだったり、紹介してもらった有識者の方とほぼ一緒に事業を立ち上げているような感じでした。

根岸:ミナカラチームは、自走力がかなりあります。自分たちでPDCAを回してどんどん改善していける。だから、正直VCとしては手を動かすというよりもディスカッションをさせてもらうことが多いですね。チーム内にB2Cビジネスの経験者があまりいないので、その戦略や人材紹介といった点をメインに支援させていただいてきました。

喜納:根岸さん、堤さんは、僕がいま考えるべきことを的確に「問い」にして投げかけてくれるところが、非常に助かっています。

根岸:特に、喜納さんが作業に追われていて考える時間が取れていないなと思ったときはお声かけしています。

喜納:そうですね。あとは、腹をくくってリーダーシップを発揮しないといけないタイミングで、自然と答えにたどり着ける問いをいただけます。

 

医療業界に大きな変革を。ミナカラが目指す「オンライン医療」の未来

根岸:コロナの影響で、医療体験も一気に変わっていくことを期待しているのですが、ミナカラが目指す未来像はどういったものなのでしょうか。

喜納:「オンライン医療、オンライン薬局」という新しい産業を作りにいきたいです。馬車が自動車社会に変わり、同じ移動でも自動車産業ができたくらいの大きな変化が医療・薬局業界に作れるのではないかと考えています。
具体的には、薬局・医療機関としての新しいユーザー体験をつくることでその未来を実現したいと思っています。患者さんが医療に触れるタッチポイントをすべてアップデートしていきたいんです。まずは、患者さんが自己判断、自己診断し得る情報部分。次に、患者さんをサポートする医者や薬剤師によるサービス部分。さらに、薬が家に届くスタイルになるので物流部分やオンライン向けの商品設計部分。これはまだ取り組んでいませんが、将来的にはお金の部分もオンライン化を進めることで変えられると考えています。

根岸:どういった変化でしょう。

喜納:医療はインフラなので、保険制度で子どもや生活保護の人は負担がなかったり、その他の人も3割程度の負担で済んだりしています。しかし、市販薬はそうではない。何らかの設計を施すことで、子ども用の薬は安く買えるなど現状を変えられるんじゃないかなというのが、将来的なビジョンです。そのためにも、ワンストップでユーザー体験を作っていくのがまず取り組んでいることです。根岸さんはどう思われますか?

根岸:薬の選び方が変わったらいいなと思っています。例えば、レストランやコスメの選び方は、ネットが出てきて変わりました。しかし、薬は買う場所がネットになっただけで、選び方は今までと変わっていないと思います。CMでよく見聞きしている商品をモールで検索して最安値のショップで買う、みたいな。

喜納:そうですね。

根岸:メディアが発展していく中でその流れが少し変わるかなとも思ったのですが、さまざまな要因もあり大きく変化しませんでした。ユーザー体験をきちんと作りに行く医療機関がないので、そこをミナカラが担っていけるのではないかと思います。薬をユーザーが選べるようになるだけでなく、選ぶ認識すら持たずに、「はい、これ」と適切な薬がユーザーに届くようになったらいいですね。
化粧品は形状も含め進化しつづけていますが、薬はまだまだですよね。そうしたアップデートも含めてミナカラが変えていけるんじゃないかと期待しています。価値観が変わる瞬間はビジネス的なシェアが取れるチャンスなので、ぜひミナカラに総取りしてもらいたいです。
ユーザーからすると、薬をどう検索すればいいのかわからないこともあるので、ベストチョイスがすぐ手に取れるのは強みになると思います。
また、製薬メーカーとの共同開発プログラムにも力を入れていますよね。

喜納:マーケティングデータを製薬メーカーに提供して、ユーザーにとっていい商品を一緒に作っています。自社だけで開発するだけでなく、既にブランドや良いお薬を持っているメーカーさんのポテンシャルを最大限引き出したほうが、業界全体をより前に進められますし、ビジネスチャンスでもありますね。こうやって、上流からの戦略を一緒に考えられるのがありがたいです。 

根岸:OTC医薬品業界のDXを一層加速させるべく、今後も共に事業推進していきたいと思います。