東証マザーズ上場を果たした知られざる会社、ココペリ。中小企業と士業・金融機関をつなぎ、すべてのビジネスに世界とつながるチャンスを。ココペリ近藤繁氏×STRIVE天野
2020年12月18日に東証マザーズへの上場を果たした株式会社ココペリ。中小企業と士業をつなぐ「SHARES」、金融機関と中小企業をつなぐ「Big Advance」など、中小企業に向けた事業を展開しています。創業の経緯から現在までの道のり、今後のビジョンについて、代表取締役CEOの近藤繁氏に、STRIVE 代表パートナーの天野がお話をうかがいました。
仕組み化で中小企業の課題解決をーーココペリ創業の原体験とは
天野:近藤さんが起業するきっかけとなった出来事をお聞かせください。
近藤さん(以下、近藤):原点は、大学生時代のアメリカ留学経験です。二十歳頃、ふと「このまま就職してしまっていいのか?」という思いを抱き、外の世界を見るために休学して渡米しました。そこで、どのような仕事をしている人も非常に楽しげな様子であることに衝撃を受けたんです。それまでの私は、「大企業に行くことこそが人生」だと思っていたのですが、多様な人たちと触れ合うことで「こんな生き方もあるんだ」と感じ、仕事に対する視野が広がりました。
大学時代は情報工学科に在籍してプログラミングを学んでいたのですが、当時はインターネット企業が多くうまれた時期だったこともあり、”起業”を意識するようになりました。就職先を検討する際、さまざまな経営者から学べる環境を重視し、みずほ銀行への入社を決意しました。その後、中小企業への転職を1度経験し、起業に至りました。
天野:起業した当初から中小企業向けのサービスを提供したいという想いはあったのでしょうか。
近藤:はい。中小企業の経営者とお話していると、皆さん事業やサービスに誇りや生きがいをもっていらっしゃり、、本当に生き生きとした姿で経営されているんです。彼らの姿がアメリカで出会った楽しそうに働く人たちと重なり、中小企業を支援するサービスを提供したいと思うようになりました。
天野:最初はどういったことから始められたのでしょうか。
近藤:資金繰りの相談やBPOのアウトソースを受ける等、財務コンサル業務をメインとしていました。これが後に「SHARES」立ち上げにつながっていきます。創業から「SHARES」を開始する2015年までの7~8年ほどは、ほぼひとりで会社運営に従事しました。
天野:そこから成長し、2020年12月に上場を果たされた。上場に至るまでどういったことがあったのでしょうか。
近藤:中小企業が成長できること、私がそれまでやってきて得意とする財務的な支援サービスを提供すること、の2点は一貫していました。創業当初、支援先の中小企業には、銀行から融資を受ける際に必要な試算表がないケースが多々あることに気づき、経理業務の外注ビジネスを開始します。ただ経理業務を外注するだけではなく、当時はまだなかったいわゆるクラウドソーシングの手法で中小企業とフリーの経理担当者をマッチングする仕組みを提供することで中小企業の課題を解決していきました。
天野:その後、お客様の反応はいかがでしたか。
近藤:経理から始めた外注ビジネスの取り組みを続けているうちに、税務・法務・労務といった専門的な相談が寄せられるようになりました。当時はまだ中小企業に顧問税理士はいるものの、顧問弁護士や社労士を置いているところは少なったんですよね。
天野:なるほど。そのような状況を会計や弁護士等の士業に携わる方々はどのようにお考えだったのでしょうか。
近藤:中小企業に向けてサービスを提供したいがつながるルートがない、とうかがいました。そこで、2015年に「中小企業と士業の方々をつなげよう」と発案しリリースしたサービスが「SHARES」です。今では、「SHARES」は士業とマッチングするクラウド型プラットフォームとしては最大規模にまで成長しました。2,000人ほどの士業の方々に相談できる点が強みです。
天野:金融機関と中小企業をつなぐ「Big Advance」の発想はどこからきたのでしょうか。
近藤:「Webサービスが届くのは、リテラシーが高い人に限られる」ことへの課題意識があったんです。Webマーケティングに注力しても、Webを使わない町工場にはサービスの存在は届きません。Webサービスに対するリテラシーが限定的な中小企業に届けるにはどうしたらいいのかと考え、「地方の中小企業につながるラストワンマイルは、地方の金融機関なのではないか」と気付いたんです。
その後、横浜信用金庫の方から「SHARESを提供したいから提携できないか」と打診をいただきました。そのお声がけをきっかけに開発を一気に進めたという流れです。そして、2018年に「Big Advance」の提供を開始します。
天野:外部から資金調達をしようと始動されたのがその頃ですか。
近藤:最初の調達は「SHARES」を作る前の2015年でした。
天野:創業から8年、外部資本を最初に入れるときのハードルは高かったのではと思いますが、踏み切られた背景には何があったのでしょうか。
近藤:より事業の成長スピードを加速したかったことと、それまで我流で事業を推進してきたため、アドバイスをいただきたかったことも理由でした。中小企業向けにAIを活用した与信の分析・予測モジュール「FAI」も走りながら考えていたような状態だったので。当時、「FAIは中小企業よりも金融機関にとってのツールになるのでFinTechだから」と言われて初めてFinTechを意識したことを覚えています(笑)
地方金融機関と連携するという銀行経験者だからこその発想におもしろさを感じた
天野:STRIVEがココペリに投資したのは、ココペリが創業10年目になる2017年でした。正直、銀行出身の方の優秀さと起業家として求められる発想や行動力には違いがあると思っていましたし、銀行出身の起業家で成功した事例はまだ少なかった印象です。しかし、近藤さんにお会いした時にその印象が変わりました。
近藤:どのような印象だったのでしょうか。
天野:起業された理由やこれまでのご経験など、さまざまなことをお話しして、高い視座や将来のビジョンを描いていらっしゃることに共感しました。
メガバンク出身で、地方金融機関との連携に可能性があるというお話は、銀行にいた方だからこその発想だなとおもしろさを感じました。提携する大手開発会社の方々からの評判も非常によかったです。地方の中小企業はまだWebサービスに対するリテラシーが相対的に低くなかなか大手ITサービスがアクセス出来ない中で、対面で直接アクセス可能な地銀や信金を絡めて全国の中小企業向けのサービスを作っていくのは、FinTech領域における課題解決のひとつになり得ると確信しました。また、当時まだまだ課題の大きいFinTech領域が当社の注力テーマのひとつだったことも、投資を決めた理由のひとつです。投資させて頂いた2018年4月はまだ「Big Advance」をローンチする前のことでしたね。
近藤:そうですね。
天野:地方金融機関からは、どんな反応がありますか。
近藤:「Big Advance」を導入することで中小企業の経営に関する悩みをスピーディーに解決できるため非常に好評いただいています。
予想外だったのは、「若手のモチベーションが上がった」というフィードバックです。
金融機関、特に地方金融機関は、まだまだデジタル環境が整っていません。地元をどうにかしたいと高い志を持って入ってきた若手が、能力を十分に活かしにくい環境にあることも事実です。「Big Advance」導入後は、マッチングニーズを検索して取引先にビジネスマッチング先を提案したり、お客様とチャットでコミュニケーションを取ったりといった具合に、存分に使いこなしていただけています。どの地方金融機関にも、若手社員に「ミスターBig Advance」がいます(笑)。
天野:エバンジェリストみたいですね。現状、提携金融機関はどれくらいなのでしょうか。
近藤:2020年11月末時点で55社にまで拡大しました。認知度が上がってきたこともあり、導入までのリードタイムが短くなっています。また、金融庁との連携も進めています。財務大臣の麻生さんが、国会答弁でココペリの名を出してくれたこともあるんです。
天野:新型コロナウイルス感染症の影響はありますか。
近藤:これまでオンラインツールの導入ハードルの高かった金融機関が、「コロナで対面での商談ができないから」とオンライン上でやり取りできるようになったケースがあります。また、コロナを理由とした解約はなく、活用度合いはむしろ増えています。例えば、中小企業向けにホームページを簡単に作れるサービスがあるのですが、コロナ禍の中でよりネットで情報発信をしていきたい企業に活用されています。
天野:まさに地方の中小企業のDX化に貢献されているんですね。市場は大きいですね。
世界に誇れる日本のテックカンパニーを目指して
天野:上場後、将来的に担っていきたい役割、変えていきたいと描かれている未来をお聞かせください。
近藤:アイディアはたくさんあります。中小企業の労働生産性を高めるために、デジタルトランスフォーメーション(DX)が大事な一つの要素だと思っています。DX化を進めるためにも『Big Advance』を中心とした成長を目指していきたいと考えています。機能の追加や当社や他社のサービス連携も視野に入れ、将来は人工知能(AI)を活用したオンライン融資サービスのような機能も加えることも考えていますね。
天野:ココペリだけではなく、連携している全国の金融機関をフックに提供できるのは強みですね。
近藤:基盤を増やしながら課金機能を追加したり、プラットフォーム化して他サービスと連携したりするなど、さらに事業スピードを加速していきたいと考えています。
天野:上場後、ココペリをどんな会社にしていきたいですか。
近藤:会社のミッション・バリュー「企業価値の中に、未来を見つける」の実現を目指したいです。実現することで、中小企業が誇りを持った商品を胸を張って売れる世界になり、みんなが幸せになれるのではないかと思っています。中小企業が持っている技術力がもっと認められる世界を実現するため、ココペリはまだスタートを切ったばかりだと思っています。
会社としては、世界に誇れる日本を代表するテックカンパニーになりたいです。テックの定義は、「作るから届けるまで」。組織が大きくなり今回IPOをしましたが、これからがスタートです。経営理念である「企業価値の中に、未来を見つける。」の実現に向けて、社員一丸となり新しいスタートをきりたいと思っています。