本当にほしい化粧品が見つかり、当たり前に買える世界をーーユーザーと共に化粧品市場を改革するノイン 渡部氏 × STRIVE 根岸

投資先by STRIVE

250万ダウンロードを突破した化粧品ECプラットフォーム「NOIN(ノイン)」。自分にぴったりの化粧品を購入できる場所として多くの女性に支持されています。そんなノイン株式会社が考える今後の事業展開や未来像について、ノイン代表取締役CEO 渡部氏とSTRIVE パートナー 根岸に話を聞きました。

化粧品ECからDX支援まで幅広く展開

根岸:まずは現在展開されている事業について教えてください。

渡部さん(以下、渡部):化粧品ECプラットフォーム「NOIN(ノイン)」を運営しています。NOINは様々なメーカー、ブランド、セレクトショップの方々と連携し、プチプラからブランドコスメまで8000SKU以上の商品が集まるプラットフォームです。アプリは250万以上ダウンロードしていただいています。

また、NOINの強みを活かした化粧品メーカー様のDX支援にも注力しています。NOINでは、ユーザーが様々な化粧品を合わせ買いしています。こういった消費者データや化粧品の詳細がわかるクリエイティブノウハウを活用し、化粧品メーカー様のEC化を推進します。ECへ進出したいメーカー様をご支援する場合もありますし、少し大きなプロジェクトとしては、大丸松坂屋さんとも、新しいECの形にチャレンジする取り組みを実施しました。

ビジネスパートナーとして、ファミリーマートさんと提携し、新たな取り組みにもチャレンジしています。

根岸:DX支援の動きには、どのような背景があるのでしょうか?

渡部:新型コロナウイルスの影響で生活様式が変化し、来店客数が減少したり、タッチアップできるという強みが薄れたりするなど打撃を受けているのが現状です。そのため、今後どうあるべきかを模索していらっしゃる段階です。

オフラインで商品提供する事業者の最大の悩みは、お客様が来店するまでアクションを起こせないことです。クーポン配布などできることはありますが、来店したお客様に対してどのような接客をし、さらに来店してもらうためにどのようなアプローチをするかという仕組みが確立されていません。この来店の仕組み作りにおいて、ノインがファーストパートナーとして選ばれつつあると感じています。

今後は、ノインが「なくてはならないインフラ」としてより深く関わっていけるのではないかと考えています。

根岸:化粧品のオンライン販売はこれまでも多くの小売メーカーが課題に感じていた部分かと思いますが、なぜ今大きく動き始めたとお考えですか。

渡部:これまでは、インバウンドでの売上が伸びていたので、DX推進の優先度がそこまで高くなかったようです。しかし、新型コロナウイルスの影響でインバウンドでの売上が減少し、やるべきことがよりシンプルになり、DX推進の動きを加速しなくてはいけない環境ができあがったのだと思います。

実は、大丸松坂屋百貨店さんや大手小売メーカーとの話は、コロナ前から進めていましたが、今回一気に推進する流れとなりました。

ティアを超えた商品提供を目指す

根岸:化粧品業界の現状についてはいかがでしょう。

渡部:僕らが課題だと感じているのは、「売り場と使い手側との間にズレが起きている」ということです。

化粧品の売り場は、大きく4つに分かれています。ひとつは百貨店。そして、もっとも売り上げ規模が大きいドラッグストア。さらに、ロフト・東急ハンズ・プラザといったバラエティストアと化粧品専門店の4つです。

このような売り場のことを「ティア」と表現しているのですが、化粧品ブランドは、ティアを超えて他の売り場に出ていくことはほとんどしないのが現状です一方でお客様は、ティア関係なく化粧品を購入しています。ここのズレが大きいと感じています。

また、百貨店は地方を中心に閉館ケースも発生してきており、今後、この流れは続いていくことが予想されます。加えて、化粧品専門店も減少している中で、ドラッグストアに訪れた消費者の中は「買いにいったけれど置いていなかった」という現象も起こっています。

ドラッグストアでは飲料品の需要が大きいので、地方を中心に化粧品の新商品が入荷されず、ほしい商品が買えない人たちの方が多いのです。そうなると頼れるのはEC。しかし、国内のEC化率はかなり低いのが現状です。

裏側には、「タッチアップしないと不安で買いにくい」というティアの問題がひとつ。そしてもうひとつが、商品流通の構造上の問題が背景にあります。また、マーケットには並行輸入品が多く、メーカーによる正規品の出品はまだ少ないのが現状です。

僕らが実現したいのは、「本当にほしい化粧品が『見つかって』、それが『当たり前に買える』世界をつくる」こと。これを作り上げるために4つの事業戦略を考えており、それに沿ってビジネスモデルを展開しています。

根岸大丸松坂屋百貨店さんとの取り組みも、ビジョンやビジネスモデルに沿って推進されていますよね。そもそもなぜ、大丸松坂屋百貨店さんと提携することになったのでしょうか?

渡部ブランド・エクイティを最重要するというブランド側のニーズと、ノインの独自性・特徴がフィットしたからだと考えています。

百貨店系のラグジュアリーブランドは、ブランド・エクイティを大切にしています。彼らの考えるブランド・エクイティを担保できる仕組みがノインにあるかどうかが大切です。例えば、ブランドの世界観を担保できるような機能を持っているかどうかなどです。

また、外資系のブランドが多いので、ユーザーデータをノイン側からブランド側へ提供できるかどうかも、取り組みの前提条件として挙げられていました。その点を実現できたこと、またブランド側が求めるユーザーがノインにいることが取り組みに繋がったのだと思います。

根岸:具体的にはどのような取り組みをされているのでしょうか?

渡部:基本的には、「NOIN」というプラットフォームに大丸松坂屋百貨店傘下の「Amuse Beauté(アミューズ ボーテ)」という化粧品専門店が出店する形式です。そこで取り扱われているブランドの商品が「NOIN」でも取り扱えるようになります。また、「Amuse Beauté(アミューズ ボーテ)」のECサイトをノインで制作しています。

「NOIN」は、1つのプラットフォームですべての販路で販売されている化粧品が購入できる、唯一のプラットフォームです。今回の取り組みで、ハイブランド約20ブランドの取り扱いが可能となりました。

根岸ファミリーマートさんとの提携・PBアイテムの発売も話題になりましたよね。こちらは、どういった狙いで提携を開始したのでしょう?

渡部:僕らはPB商品の開発・販売で利益を出したいわけではなく、PBをタッチポイントとしてノインをより深く知ってもらいたいという狙いを持っていました。その点、ファミリーマートの1万6,500店舗というのは、とてつもない価値があると思いました。

コンビニ業界では、どのようにお客様あたりの来店頻度を高めていくかがとても重要な課題となっています。その中でも、若い女性に来店してもらい、何か購入してもらうためのアンサーは出せていなかったのです。

そのお客様を抱えているのが「NOIN」でした。さらに、「NOIN」での購入者の平均年齢は25.8歳と若いので、クレジットカードでの決済比率は低く、後払いとコンビニ決済を利用する方が多いです。つまりこのデータは、料金を支払うためにコンビニへ行っていることを表しているのです。

そこで、「コンビニ手数料をファミリーマートのみ0円」というキャンペーンを行うことでファミリーマートに送客し、「ファミリーマートでしか買えないアイテムを発売する」ことで売上に繋げる。これがノインができることだとご提案しました。さらに、今の時代に刺さる商品を、定量・定性の両面で調査し開発できることも我々ならではの強みだと考えています。

根岸:しかも、今回発売したsopo(ソポ)のアイテムはお手頃な価格なのが嬉しいですよね。

渡部:僕らはPB商品の開発・販売での大きな利益を求めていないので、トレンドの商品を市場のおよそ半値で出しており、圧倒的な顧客価値をつくっています。

根岸:まさか850円で買えるとは……と思いました。

渡部:ちなみに、カラーアイテムはフルの量では多いと思ったので、サイズを小さくしたところもポイントです。

根岸:色々試せるのがいいですね。

渡部:ありがたいことに、一人当たり3本ほど買っていただいています。パッケージをシンプルにしたことでSNSにパッケージの写真も投稿してもらえていて、1商品あたりに、パッケージ・商品・スウォッチと3回も投稿機会を作ってもらえています。「sopo」というブランドを通して、よりノインを知ってもらえる機会が広がってきていると感じています。

ノインが考える未来像、化粧品市場の改革

根岸:ノインさんが目指している未来像を教えてください。

渡部:僕らが目指しているのは、「本当にほしい商品が見つかり、それが当たり前に買える場を作ること」。これを作り上げるために、4つの事業戦略を立てています。

1つ目が、ティアで分散していたブランドをノインに一極集中させること。そうすることで、プチプラを買って貯めたポイントでデパコスにチャレンジすることを可能にできると考えています。

2つ目は、高品質で優れた商品を選定、開発すること。日本のマーケットだけではなく、世界中から持ってくればいいと考えており、4月に資本業務提携をした伊藤忠さんとの取り組みは、この事業戦略に基づいた形です。「高品質で優れた商品がなければ開発する」という観点で、PB商品も展開しています。

3つ目が、「ノインでしか買えない」というロイヤリティの最大化です。エクスクルーシブ契約を結び、ノインにくる理由をしっかりと作っていきたいと考えています。

そして4つ目が、各ティアに商品配荷面を確保すること。EC化率が低く、どうしてもオンラインだけでノインの認知度を上げることはむずかしいので、オフラインのティアも活用して、僕らのリーチを最大に伸ばしていきたいと思っています。

これらを推進することで、化粧品業界で新しい買い物体験を作り上げられるプレイヤーにノインがなっていけるのではないかと思っています。全ての面において僕らが何かしらのインフラとなり、それに触れたお客様が「ほしい商品が当たり前に見つかって、当たり前に買える」という体験ができるのが、僕らの存在価値です

なので、プラットフォームであることは間違いないのですが、それがtoC側のときにはおそらくECやメディアという側面に。対してtoB側のときには、ノインを介在してお客様に対して正しいコミュニケーションを取れるかという側面に変化していくのだと思います。後者にあたるDX支援などが2021年以降、より進んでいく部分になってくるかなと考えています。

根岸:今後、ノインさんの価値が益々上がっていきそうですね。本日はありがとうございました!