世界を目指す空飛ぶクルマの15億円調達ストーリーと裏舞台【SkyDrive代表 福澤✖️STRIVE堤・古城】<前編>

by Hiromi Ozawa

近年では数十億円単位での調達を実施するスタートアッププレイヤーも増えてきました。2019年9月末にSTRIVEからも出資し、総額15億円の資金調達を実施した空飛ぶクルマを開発する「SkyDrive(スカイドライブ)」もその中の1社です。

今回は調達内容や調達時の事業に比べて語られることの少ない「資金調達中のVCパートナーとの会話やデューデリジェンス、ストーリー」についてSkyDrive代表取締役の福澤知浩氏とSTRIVEキャピタリストの堤・古城の対談をお送りします。

(以下、質問者は全てSTRIVEタレントパートナーの小沢 宏美、回答者はSTRIVEキャピタリストの堤達生、古城巧、SkyDrive代表取締役の福澤知浩氏)

人々の生活を変える可能性があるモビリティ「空飛ぶクルマ」

ーー早速ですが、まずは改めてSkyDriveの事業について福澤さんにお伺いしても良いですか?

福澤さん:僕たちは空飛ぶクルマ(無操縦者航空機)を作っているスタートアップです。未来のモビリティ社会への貢献を目指し、完全自立の自動操縦でどんな飛行をも実現する次世代のモビリティを生み出したい思いを持っています。今は開発とその先のプロダクト事業化に注力しています。

ーー福澤さんはなぜ空飛ぶクルマを作ろうと思ったのでしょうか?

福澤さん:もともとは自動車関連の会社に勤めていました。ふとしたことからIT業界に興味を持ち、「IT業界のイノベーションって楽しそう」と思うようになりました。数パーセントで燃費が良くなる、という自動車業界に比べ、IT業界ではテクノロジーで日常生活が変わるようなイノベーションが日々起こりますよね。

このイノベーションを自動車をはじめモビリティ分野で良くしなければならない、と感じたのがきっかけです。

ーーとはいえ、自分で着手するのは大変そうですが…実際に作ってみようと思ったきっかけはあったんですか?

4年前は趣味からはじめました。5分の1のサイズで自分で作って、周囲に見せてみると思った以上に反応をもらえて……。クラウドファンディングの実施やビジネスコンテストで入賞したこともあり、反響が少しずつ広がっていきました。

だんだんとプロジェクトも大きくなり、やりたいことも大きくなったので、これならできると事業化へ踏み込みました。

堤:事業化するかどうかの壁って結構大きな部分があると思うんですが、ジャンプしようと思ったきっかけはあったんですか?周囲の後押しだったのか、自分の変化だったのか……。

福澤:それで言うと、自分の中の意識変化が大きかったです。もともと面白いものづくりのプロジェクトをしたいと思って自動車会社に入ったのですが、次第にふとんやカーペットなど自動車会社以外のプロダクトに関わるようになっていったんです。

そのときにオーナー企業のオーナーが意思を持ってものづくりを進めるのって面白いと感じるようになりました。最初はオーナーを支援する形で自分の会社を作って、福田商店というものづくりのコンサルの会社をやって楽しかったのですが、よくよく考えると「一番面白いのって空飛ぶクルマじゃん」と思うようになってきて。

ドローンの登場やチップの値段の低下、Uberがモビリティ分野での事業構想を発表するような時流もあり、面白くてかつ事業の可能性もあり得ると見えてきたので、本気でやろうと自分の腹落ち度が「どすっ」と最後は来たかんじです。

ーー「どすっ」に何があったか気になります(笑)。

福澤:去年の5月くらいだったんですが、ここまで3年間くらいやってきて、中途半端にデモフライトなんかで終わってしまうのはもったいなさすぎると感じたんです。これから本気でやっていったら産業になるかもしれないし、自分たちの新しいモビリティがiPhoneが出てきたような革新になるかも、と。

人々の生活を変える可能性があるのに、みすみすやめていいのか。何より空飛ぶクルマにに自分も乗りたい」という強い思いがありました。

資金調達やビジネス推進はプロダクトのための着実なマイルストーン

ーー福澤さんは、今回の15億円の資金調達に踏み込んだのはどういった経緯や目的だったんですか?

福澤:僕たちは世間の付加価値を軸にしたマイルストーンを資金調達面でも引いています。目下は2020年の有人デモフライトを目標としており、そのためにも今回資金調達を実施しました。数ヶ月でのずれはあるものの、起業したときに立てたマイルストーン通り進んでいます。

ーー起業したときからマイルストーンがずれないのは何か工夫されていたんですか?

福澤:起業前にボランティアメンバー全員で事業化について話したときに、土日や空いた時間で中途半端にやるよりも本気でやりたいと全員が自然と決意したんです。

2020年に有人でデモフライトの目標もですし、事業化や起業ができなかったらそもそも意味がないから、みんなでマイルストーンの部分は決めて本気でやろうぜ、と進んできました。

堤:この分野のビジネスってやっぱり資金調達やファイナンスが非常に重要になってくると思うんですけど、事業化前まで福澤さんはシリアルアントレプレナーという訳でもなく、ひたすらものづくりを進めていたじゃないですか。

技術を探求することとそれをビジネスにしていくことって違うと思うんですが、何十億、何百億円と資金調達していくことを現実的に考えて不安はなかったんですか?

福澤:逆にシリアルアントレプレナーだったら、大変さが見えていると思うんですが僕にはなかったので「普通は20億円でビジネスやるけど、自分は200億円なんだ」って比較ができないっていうか…(笑)。

ので、あんまりそこの不安感はなくっていうのとファイナンス担当の強気に支えられた部分もあります。少なくとも前回のシリーズAから、最後まで入ってくださる可能性のある株主の方に参画頂いているので彼らを我々を信じてあとは進むだけですね。

ーーなるほど….!逆にプロダクトからはじまり、意識しすぎていないスタートも今に繋がっているんですね。

福澤:ただ、やっぱりやっていく中でこれは大変だというのは実感しています(笑)。

それでも世界を見渡すと宇宙ベンチャーのアイスペースさんなど100億円規模の資金調達をしている人たちもいます。だから少なくとも不可能ってことはないと思うんです。

堤:我々もデューデリで会話していく中で、技術的に不可能なことはないと感じていて、あとはそれをどうビジネスにするかがキモだと感じています。

不可能でなければ、時間がかかってもなんとかお金を集めつつ進んでいける、と。こういう夢のあるハードプロダクトは、ある種の福澤さんのように楽観的な思考も立ち上げには必要な要素になってきますしね。

福澤:あとは、「空飛ぶクルマ」というキャッチーなワードを持っていたことも周囲の支援を受け易かったとありがたく思っています。本当の名前は「垂直離着陸電動航空機」なんです。

ただ、「空飛ぶクルマ」だとみんなに興味を持ってもらえるし、見てみたい、乗りたいという人もいる。新しい市場に入っていく観点では入りやすい点もよかったですね。

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大きな世界を描きつつ、目の前のプロダクトと向き合う姿勢を大切にする福澤さん。後半ではデューデリジェンスで話された内容やSkyDriveの今後の展望についての対談内容をお届けします。

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