世界を目指す空飛ぶクルマの15億円調達ストーリーと裏舞台【SkyDrive代表 福澤✖️STRIVE堤・古城】<後編>
<本記事は『世界を目指す空飛ぶクルマの15億円調達ストーリーと裏舞台【SkyDrive代表 福澤✖️STRIVE堤・古城】』の後編記事です。>
前編では、SkyDrive代表の福澤知浩氏とSTRIVEキャピタリストの堤達生、古城巧の対談内で話された総額15億円の資金調達の実施経緯についてお届けしました。後編では、実際デューデリジェンスがどのように進んでいったのか、SkyDriveは何を目指していくのかをお届けします。
デューデリジェンスは描く未来をすり合わせる場所
ーー今回の資金調達ラウンドでのSTRIVEとはどのような出会いだったんですか?
福澤:はじめは既存株主のZコーポレーションさんからご紹介いただいたのがきっかけです。STRIVEさんはもともと知っていて、ハンズオンやゲーム以外の領域への投資の話も聞いていました。
ただIT分野への投資が多い印象だったのでハードウェアをつくる僕たちの「空飛ぶクルマ」に興味を持ってくれるのか、と思いながらお会いしました。
堤:投資前に僕の中では、これまでITのサービスに投資してそれなりに成功した部分もあったんですが、自分の力不足もあって世界で勝てるものに前のめりで投資できていない、と正直なところ感じていたんです。
どうやったら日本のサービス・プロダクトが世界で勝っていけるのか、を考えていたときにふとものづくりなんじゃないか、と思いました。
一方で、今のプラットフォーマーと呼ばれるものたちを見てみると販路も含めてほぼ外国の人がつくっているじゃないですか。これから5Gの時代になっていくことも踏まえて、モビリティ領域はハードから含めていろんなプラットフォームが出てくる可能性があるのではないかと考えました。
福澤:日本にはソフトウェアに投資する企業さんの方が多いので、ハードウェアに興味を持ってくれるのか、という課題はSTRIVEさんに限らない話です。なので、投資家さんの話した後の反応もわかりやすく専門外とされてしまうか、とても興味があるから進めていこうのほぼ二択にわかれていました。
そんな中で堤さんと古城さんに興味を持っていただけたのは嬉しかったです。
堤:プロジェクトとしての難易度は高いものの、うまくいった時の成功度は大きいのではないかと感じていました。「空飛ぶクルマ」というワードにはワクワクするし、福澤さんのようにこういった未来的プロダクトをビジネスとして語れる人も少ない。
プロジェクトのテーマや技術と事業への目線のバランス、モビリティという領域や5GやIoTの時流も含めて総合的に投資する決定をしました。
ーー投資を進めていく中でよく覚えているエピソードはありますか?
福澤:古城さんと深夜までQAを重ねたことですかね(笑)
堤:本格検討するタイミングでちょうどSTRIVEに古城が入社してきたんです。外資系コンサルティングファームで自動車業界を担当していた彼が入ってきたこともあってデューデリジェンスも含め、しっかりと進められました。
よく僕は言うんですが、デューデリジェンスは間違い探しや粗探しをしているわけではないんです。こうしたらこの企業はうまくいくというストーリーや仕組み、未来を考えていく投資仮説を作るためにある。
福澤さんないし、SkyDriveという会社がもつ世界観に対し、自分たちがデューデリジェンスを通じて、創り上げていく投資仮説が一致することで、同じ未来を見ることが出来、結果としてそれが成功確度を高めることに繋がるからこそ、古城や僕もつい力が入ります…!(笑)
ーー具体的にどんなやりとりをされたんですか?
古城:ユーザー目線でプロダクトに対するニーズが本当にあるのか、どのような未来を実現しようとしているのか、どのような方法・ステップでその未来を実現するのか、といった論点を重点的に議論しました。
福澤さん:あとは販売台数がどのように増えていくのか、増えていく前提はなんなのかの根拠のすり合わせもしました。
ーー投資までの期間はどれくらいかかりましたか?
堤:意思決定自体は1ヵ月くらいで、早い段階で終わっていました。その後に他の投資家とのすり合わせを行い、最終的なクロージングは8月末に終わりました。
投資委員会では、正直かなり紛糾しました。。STRIVEとして初めてのハードウェア投資なのはもちろん、それをかつリードで参画することになるので、本当に出来るのか、STRIVEや堤の強みは生きるのかという議論ももちろんありました。
古城:投資委員会ではプロダクトのニーズや市場の見立て、SkyDriveのビジョンや描いている将来の世界観を、関係者全員へ丁寧に説明していきました。
堤:得意な領域の投資ばかりでなく、新しいチャレンジをすることは常に必要だと思っています。STRIVEⅢという新しいファンドが出来たこのタイミングで、今までやったことのない領域という意味で象徴的な投資案件になりました。
もちろんチャレンジにはリスクが伴いますが、僕たちはリスクを把握し、自分達なりの投資仮説をもった上で、挑戦していきたいと思っています。
ーー先ほど、興味を持ってもらえるか…という部分があるとおっしゃってましたが、福澤さんがファイナンス時で他に困ったことはありますか?
まだ2回目なので経験が少ないことに起因してしまうのですが、いろんな投資家さんと話していると検討確度が掴めなくことがあります。投資確度や時期において、急に出せる額が変わったり、急に進みます!などスケジュールが変わったり…本当にいろんなことがあります。
それぞれの立場があるのもわかるのですが、現場を見ればどうしようもないことも…というのもあるので、メンバーできちんと社内を整えて、次のファイナンスを迎えられたらいいな、と思っています。
ただ、妥協は一切せずにできたのがよかった点です。ファイナンスでしばしばストーリーに失敗する、ファイナンス後に投資家と進め方がずれる、経営者の中でもめるなどもよく聞きます。それがなかったのは株主や社内ときちんと対話して内容を揉めたからだと思っています。
ーーSTRIVEの投資が決まってからは、どのような取り組みがありましたか?
堤:今回、福澤さんが本ラウンドのさらに先を見越して投資家を選び、タッグを組めたのは素晴らしいと思います。次の調達においても、要となるファイナンス面においては率先して支援していきたいですね。
ビジネスモデルや事業化の話もあると思いますが、ハードウェアでは次のキャッシュアウトのタイミングも大きな課題になるので次のマイルストーンと行動計画が重要です。
古城が週2回お邪魔させてもらっていますが、実際の行動面や現場の経営チームの強化のための採用なども積極的にお手伝いしていきます。
福澤さん:小手先で紹介などではなく、がっつりと内部を知ってもらった上で本当に伴走していただけることに正直びっくりしました。
僕たちも目的に対して最短でいきたいので、採用面や資料面などプロのアドバイスは本当にありがたいです。会社の背景もわかってくれているので、PDCAを回している中でキャッチボールできてる感があり心強い存在です。
共に手を取り、必ず世界で勝てるプロジェクトに
福澤さん:我々の引受先となってくださったファンドの方々には、それぞれ特色があります。STRIVEさんは日常的な支援、ドローンファンドさんは法律や技術面、伊藤忠テクノロジーベンチャーズさんだとグローバルでの支援とそれぞれ活躍の場所があります。
堤:ベンチャーキャピタルのファイナンスで各投資家の役割を明確化するというのは理想的ですが、なかなか実現が難しいことも多いです。フォローも含めて福澤さんのファイナンスには美しさを感じますね。シリーズBも意識して良いファイナンスに持っていきたいと思います。
最先端のプロジェクトを進めていると自負する中で、世界に負けたくないじゃないですか。技術や可能性があっても、お金がなくて負けてしまうのはあまりにももったいない。かっこよくオールジャパンでやっていきたいです。
福澤:今のところ日本初の取り組みができていますが、僕たちはいかにグローバルの中で勝つか、です。自分たちがどんな価値で勝っていくのかを詰めていきたいと思います。まずは、直面する2023年の事業開始に向けて進み、実際に実現するところまで必ず到達します。