コスメ市場のデータを100%取りにいく―「ほぼ社員」のハンズオンが実現したノイン8億円資金調達の舞台裏【ノインCOO千葉×STRIVE根岸】

by Hiromi Ozawa

日本最大級のコスメショッピングアプリNOINを運営するノイン株式会社。2019年8月、総額8億円の資金調達を実施し、今をときめく注目のスタートアップ企業のひとつとして各メディアに報じられました。その基盤を支えたのは、2019年3月より同社COOに就任した、元株式会社Gunosy執行役員の千葉久義氏です。

今回はノインが資金調達を成功させるまでの経緯やSTRIVEのハンズオンについて、千葉氏とキャピタリストの根岸の対談をお送りします。

(以下、質問者は全てSTRIVEタレントパートナーの小沢 宏美、回答者はSTRIVEキャピタリストの根岸奈津美、ノイン株式会社COOの千葉久義氏)

ほぼ社員のように―スタートアップの課題にダイレクトに届くハンズオン

――はじめに、千葉さんがノインにジョインした当時はどのような状況でしたか?

千葉:若いメンバーが集う組織であっため、KPIの見方や組織運営の仕方などの知識を持つ人がほとんどいませんでした。私がノインをお手伝いしはじめた2018年末ごろはチームの各所で調整が必要な状態で、何から手をつけるべきか迷う状況でしたね。

根岸:プロダクトができて間もない企業はだいたいそういうものだという感覚があります。私は当時CEOの渡部さんの経営方針や目標をメンバーにわかりやすく伝え、それを実現するためのマネジメントをしていました。

――具体的に根岸さんはどういった形でノインに関わっていたのでしょうか?

根岸:ファイナンスの支援を目的に、その周辺にある課題解決に携わっていきました。
頻度として、週2~3日は直接オフィスに出勤しました。それ以外にリモートで稼働していた時間も加えると、多くの時間をノインに注いでいたと思います。
業務内容としては、それこそありとあらゆることを。KPIに関わるデータについてエンジニアと経営陣の間を取り持ったり、インターンのマネジメントをしたりしていました。
ファイナンスに向けてKPIを整えたり、事業計画の作成や資料を作成したりなどが中心でしたが、オペレーションに近いこともやっていました。例えば、化粧品データベース整備が挙げられます。誰がどこを担当してどこまで作業が進んだのかがわかる管理表を作り、その管理表をもとにそれぞれのメンバーに指示を出し、整備が終わったものの最終チェックをしたうえでエンジニアにデータベース入力を依頼し……。こういった業務についても、正社員のメンバーが見切れない部分をサポートしていました。

――STRIVEの掲げる“積極的なハンズオン”ですね。

千葉:ハンズオンという視点で見るならば、極めて社員に近いハンズオンです。ほぼ社員という感覚で伴走してくれたのはありがたかったです。

根岸:ノインとの関わりは2018年8月半ばから始まったものですが、とても濃い時間を過ごしていて、もっと長かったようにも感じます。……年末も商品の箱詰めとかやっていました(笑)

――根岸さんはSTRIVEのハンズオンにはどのような思いがありますか?

根岸:ハンズオンとは言えど、私がいなければ回らない組織や仕組みを作っては意味がありません。スタートアップ側としても、私よりもフルコミットしてくれる人材を採用できるほうが望ましいですよね。ですから、そこにつなげるための準備に必要なさまざまな業務をあくまでサポートするというのが私たちの立ち位置です。
ノインの場合は、千葉さんがコミットするまでの間、データベースの見方や指標の立て方について諸々アドバイスさせていただきました。また、ファイナンス周辺については、投資家とのやりとりや事業計画書作成などのサポートをしています。
COOとして千葉さんが本格的にコミットしたのが2019年3月から、こうした業務を引き継ぎました。

千葉:ちょうどそのころ、根岸さんは出産間近でしたしね。

――ハンズオンの期間、ご妊娠されていたのですか?

根岸:そうなんです。幸い妊娠中、体調も良くて脳も冴えていたので、出産する寸前まで仕事していました。その頃にノインの事業計画書の作成もお手伝いしてましたね。

千葉:会議に行くとき走ったり階段上ったり、大きなおなかでやるから焦って止めてましたよ。

根岸:そんなこともありましたね(笑)

人材採用のプロフェッショナルが盤石な組織づくりをサポート

――では、根岸さんからバトンタッチする形で千葉さんが事業計画や資金調達に携わったのですね。

千葉:そうですね。とは言っても、私はCOOとして為すべきことが他にもありますから、根岸さんのしていた仕事について新たな人手が必要なんです。そこで出てきた人材採用の課題に対しても、ご協力いただきました。

根岸:STRIVEには採用支援のプロフェッショナルがいますので、資金調達の次のステップとして、その担当者であるタレントパートナーの小沢(注:筆者)をご紹介しました。
採用基準を作るためのアドバイスや、人材採用で活用できる媒体のご提案などが主なサポートです。採用のプロが週2日ほどノインに勤務し、採用周辺の業務や考え方を整理していきました。

千葉:ノインには当時採用組織がなく、そもそもどういう人材を採用すべきかが明確ではなかったんです。そうした状況に、人材教育という準備から入っていただけたことには感謝しています。

根岸:人材教育は私たちの活用方法のひとつです。3カ月程度の期間を設け、社員の教育から一任してもらえば、私たちのサポートなく持続可能なシステムを企業内に作り上げられます。
経験豊富な人事の人材は、多くの場合大手・有名企業に転職しますから、スタートアップで優秀な人材を獲得できるケースは稀です。社員をゼロから教育し、人事担当として自立させることのほうが、スタートアップには適した戦略です。とはいえ、そのリソースが少ないスタートアップの状況も理解できますので、適切なプロフェッショナルが一時的に対応する形をとりました。

千葉:フェーズに応じて資金調達から人材採用、広報戦略までサポートしてもらった形になります。

――ファイナンスのサポートについては、どのようなステップを踏んで行われますか?

根岸:まず、CEOが考えるストーリーを提示していただきます。それに対して、投資家が指摘するであろうポイントをフィードバックし、事業計画書に反映していきます。この事業計画書作成の業務そのものに関しても、リソースがないときはサポートします。
投資家の視点と起業家の視点は、必ずしも一致しないものです。そのギャップを埋めるために、事業計画書上の数字の扱い方、シミュレーションの方向性を考えていきます。データの扱いに関しては、千葉さんとも手を組みながら事業計画書に落とし込みました。

スタートアップが今欲しいリソースを提供し、事業の持つポテンシャルに投資する

――STRIVEのハンズオンを振り返り、千葉さんはどう感じますか?

千葉:「困ったらなんでも相談していた」というのが、率直な感想です。人材採用、資金調達共に成功し、次のステップへと進み始めたノインですが、その背景のさまざまな領域にはSTRIVEのサポートがありました。

根岸:なんでも屋ではありませんが、アーリーステージのスタートアップが一番必要なのは人手ですからね。
起業家は「何をすべきか」よりも、すべきことを「どうやるか」に困っていることのほうが多いように思います。
それを解決するための道筋を立て、リソースが潤うまでの間、必要な人材や知識を一定期間提供するのが私たちの考える伴走です。優れたスタートアップに対し、今後も幅広い形での伴走ができればと考えています。

――ノインの今後のビジョンや将来性について教えてください。

根岸:ノインが運営する日本最大級のコスメショッピングアプリNOINは、コスメに関わる全データを取り得るプラットフォームです。ユーザーがどのような嗜好で、どんな商品を購入するか。コスメに関わる誰も持たないデータを持つことができることが、ノインの強みです。

千葉:コスメはオンラインではそう多く販売されてきませんでした。ECが普及した現在もなお、コスメ販売の95%はリアル店舗によるものです。ただし、私たちが努力を重ねたとしても、10年後のコスメのオンライン購入が100%になることはありえません。
そこで、オンラインはあくまでノインの強みとし、最終的にはオフラインのデータも取るという戦略を考えています。コスメに関わるデータを100%取りにいく、ということです。

根岸:この戦略は勝ち筋だと思います。あとはやるだけなので、当たることがわかっている宝くじを買うようなものなんですよ。

千葉:そこまで言い切れないけど(笑)、可能性を感じる領域への挑戦だと思います。