【 #STRIVE勉強会 】アフターコロナの従業員の働き方はどう変える?ランサーズ曽根氏が語る「スマート経営」
STRIVE Family向けに実施している「STRIVE勉強会」。専門分野のプロフェッショナルの方を招き、各社が実践的に使えるノウハウ・スキルを身につけられる講義とワーク型のイベントです。
新型コロナウイルスの感染拡大によって働き方にも大きな変革の波が起きています。そんな中で時代の変化を読み解き、順応していくことが企業の課題です。
今回ゲストとしてお越しいただいたのは、日本最大級のを運営するランサーズ株式会社取締役の曽根秀晶さん。フリーランスを支援しながら新しい働き方を発信し続ける曽根さんにこれからの新しい仕事のあり方である「スマート経営」についてお話しいただきました。
◆講師 曽根秀晶氏 プロフィール
2010年より楽天株式会社において、「楽天市場」の営業・事業戦略を担当後、海外デジタルコンテンツ事業のM&A・PMIを推進、グループ全体の経営戦略・経営企画をリード。
2015年2月、ランサーズ株式会社に参画し、2015年11月より取締役に就任。経営戦略の立案や新規事業の推進を担当。
これからは働き方もオンラインとオフラインが融合する時代
NewsPicksでPRO Pickerを務めるなど、常に情報を発信し続けるランサーズの曽根さん。まず、アフターコロナでの大きな変化についてお話しいただきました。
曽根さん(以下敬省略):「新型コロナウイルス(以下「コロナ」)によって『10年先の未来がいま、目の前にきた』とよく言われます。
インターネットやスマホの普及など、世界が大きく変わるパラダイムシフトには通常10年近くかかります。総務省によると、国内のテレワークの普及率も近年は10%付近を推移していましたが、コロナが流行したこの2カ月で70%まで広がりました。つまり本来時間がかかる時代のパラダイムシフトがこの1、2カ月で起こっています」
テレワークをはじめとしたワークスタイルは、今まさに進化のタイミングがきていると曽根さんは強調します。
新しいワークスタイルのメガトレンドとして「HRtech 3.0」が話題です。「Enproyee Experience(従業員体験)」をキーワードに、従業員を管理するのではなく、従業員の体験を向上させいかにチームのパフォーマンスを最大化するかを重要視する考え方のことです。
曽根:「HRtech 3.0の普及を背景にWithコロナ・Afterコロナの世界のワークスタイルはOMO(Online merge offline)へ変化していきます。
従来、オフィスでの仕事が一般的でしたが、コロナ禍で急激にオンラインやリモートワークが普及しました。今後はオフィスやリモート、オンラインとオフラインをどう融合させるかが重要です」
場所以外の視点もアップデートする「スマート経営」
そこで、ランサーズ社は自らが実践してきた組織運営手法を「スマート経営」と称し、時間・場所・情報・人材などの新しいあり方を社内外に提唱しています。
今までの典型的な働き方は、オフィスに出社して定時で働き、会社のPCから業務へアクセス。雇用は社員の直接雇用が一般的でした。
それが、コロナによって強制的に勤務場所が自宅に変わり、リモートで業務にアクセスできるようなセキュリティ環境やフレックス制度を導入する企業も増えました。また、コロナ禍の不安定な状況により、企業は一時的社員の雇用を抑制しています。
このように、働く様式が変わるスマートワーク、働く環境が変わるスマートオフィス、働く仲間が変わるスマートチームと、働き方をアップデートした組織運営手法が「スマート経営」です。
曽根:「アフターコロナの世界はより働き方をアップデートさせる分岐点となるはずです。先進的な人たちは自由と責任を両立させ、いつでもどこでも仕事ができて、社外の人材も巻き込んでいくようになる。そんな中でいかに今までの価値観からアップデードできるかが、今の経営に求められることではないでしょうか」
新しい時代の常識は「社内外×ハイブリッド」へ
従来の社内の人材がオフィスで働く世界から、Withコロナの世界で社内の人材がリモートで働く新しい常識が生まれました。そんな働き方の変化をふまえ、曽根さんは、社内のみならず社外の人材ともオンラインでスピーディにチームを作れることが次の常識になると予想しています。
曽根:「社外の人材を活用するメリットは、チームを流動的かつスピーディに作れることです。従来の雇用では、スペシャリスト人材の不足や雇用に時間がかかることが問題でした。社内外の人材をスピーディにチーム化し、人がイノベーションを生み出す。定型的な仕事はAIやRPAを使って生産性を上げていく。それが今後の人材活用のあり方となっていくでしょう」
雇用モデルの主流は、企業や職種でのマッチングから、プロジェクト単位の「パートナーシップ型」へ。働く人はミッションに対する共感度や共に働くメンバーを重要視するようになるようです。
スマートワークでの課題にどう向き合うか
スマートワークやリモートワークが普及する一方、様々な課題も浮き彫りになりました。
特にリモートワークでコミュニケーションの質量が減ることで、チームでのコミュニケーションや仲間同士の信頼関係に起こる変化は考えなければいけない問題です。
曽根さんは、スマートワーク下でのコミュニケーションも工夫次第で解決できるといいます。
曽根:「まず、スマートワークでは個人作業の生産性が上がることがわかりました。組織・チームでの生産性も、ミーティングのアジェンダを作成するなど、当たり前のことをしっかりできていれば生産性は下がりません。
形式だけの定例ミーテイングや愚痴がメインの飲み会など、リモートによってあぶり出された不要なコミュニケーションもありました。
一方、関係性の質を高めるような飲み会や創発的なブレインストーミングは、リモートワークによって失われがちなコミュニケーションです。偶発的なコミュニケーションはオンラインでできる工夫や、いっそオフィスに集まって行うなど、解決策を考えなければいけません。オンラインでできないものはオフィスでやるなど、使い分けも有効でしょう」
曽根さんは「スマートワークを実践する上でのway」も公開されています。みなさんの企業でもぜひ取り入れてみてください。
▼スマートワークを実践する上でのway20選
ランサーズが行うスマート経営の施策
曽根さんが取締役を務めるランサーズでは、スマートワークを根付かせるために、仕組みや制度づくりといったインフラ面でもさまざまな工夫をされています。
そこで、最後にランサーズでのスマートワーク施策の一部をご紹介いただきました。
▼施策①:スマート経営5原則・リモートワークway
ランサーズでは一番最初に「スマート経営5原則」と「リモートワークway」を設定したそうです。特に曽根さんは①と④が良い考え方だと語ります。
曽根:「①の『企業活動の最大かで社会貢献すること』は、この変化のタイミングだからこそ、フリーランスの人に仕事を届けることが最大の社会貢献だという考え方です。
④の『全社員がランサーズの働き方 OSアップデートの責任者』は、働き方に向き合うランサーズだからこそ、一人ひとりが新しい未来のランサーズの働き方を作っていこうというスタンスが示されています。
コロナ禍のピンチな状況だからこそ、いかにチャンスととらえてどう未来へジャンプするか。それをトップがスピーディに決定して発信したことで、スタンスや向かうべき先が決まったのは大きかったです。」
▼施策②:自社の電話代行サービスを導入
ランサーズ社ではスマートワーク化に伴い、代表電話の取り次ぎをランサーズに登録しているフリーランスや在宅ワークの方に代行してもらいました。
実は、この電話代行が好評で、新サービスにもなったのだとか。自社で使ってみたら需要がありそうだと感じ、1週間ほどで商品化。思いのほか反響がありました。
▼施策③:全社オンライン集会を徹底的に磨き込む
スマート経営への移行に伴い、ランサーズ社がとくに注力したのが、全社集会のリニューアル。経営戦略の共有やMVP表彰といったコンテンツの発表方法を工夫するほか、臨場感を出せるUI/UXを作り込むなどに投資しているそうです。
曽根さんによると、今までは聞いてるだけだった社員が積極的にガヤを飛ばすなど、社員のコミットメントも向上したとのこと。社員からは「より参加した感じがする」「一体感が感じられる」「戦略がわかりやすくなった」などの声が挙がり、オフラインの時よりも5倍くらい盛り上がったそう。一番成功したスマート経営の施策だと話されていました。
裁量労働やフレックス、成功の鍵は自分のスタンスや状況を伝える「スピークアップ」
STRIVE株式会社 岩井さん(以下敬省略):「ここからは、皆さんからの質問や議論を深めていく時間になります。これからIPOを控える経営者の方も多いと思いますが、ランサーズでは従業員の勤怠や残業管理はどうされていますか?」
曽根:「ランサーズではIPO前に、労務周りは徹底的に整備しました。いまスマート経営に働き方を移行しても、労務の基礎がしっかりしているので柔軟に対応できています。会社が大きくなっていく上で早く労務やバックオフィスの基礎を作ることが大事ですね。
ランサーズには会社で働きながら世界一周に挑戦している社員がいます。基本的に海外にいる間は日本時間とのズレが生じます。しかし、会社やチームと社員が信頼関係を築き、最低限のルールを決め、ミッションへのエンゲージメントを持って仕事ができれば問題はありません。」
会社の制度などのハード面と、ミッションなどで社員のエンゲージメントを高めるソフト面がどちらも必要で、そのバランスがスマートワークの鍵になっている、と曽根さんは語ります。
岩井:「昼夜逆転した社員の深夜手当てなど、労務の対応はどうしていますか?」
曽根:「エンジニアは裁量労働にしています。また、先ほどお話した世界一周をしている社員はフレックスで対応していて、深夜残業は出していません。
他社の事例ですが、サイボウズでは『100人100通りの働き方』を実現するために『チームの画一性と個人の多様性をどう両立させるか』を徹底的に議論しているそうです。
チームとして生産性を上げる働き方を議論した上で、意義があるならしっかり意見する、社員の『質問責任』を大事にしています。
例えば、深夜に働くことで作業効率が昼に働く2倍になる人は、それをしっかり意見する。それから裁量労働にするかを検討し、全体の仕組みなのか、個人の特別対応なのかを落とし込みます。
その結果ランサーズではエンジニアは裁量労働に統一しました。」
働き方は会社の思想や哲学に直結します。個人の働き方の多様性を推進していく上で、しっかり議論をするべき重要なポイントです。
個人の働き方が多様化する中、会社側から制度の整備やミッションの明示化はもちろん、個人が働き方のスタンスや状況を伝えていくことが重要になっていきます。
Zoomの常時接続に意味はある?リモートコミュニケーションを活発にするコツ
株式会社ミナカラ 中尾さん:リモート業務でちょっとしたコミュニケーションが取りにくいという課題があるのですが、皆さんはどうしていますか?
弊社ではZoom部屋を使って、ちょっとしたコミュニケーション取れるようにしていたのですが、やっぱり盛り上がりに欠けるのが気になっていて……
曽根:Zoomの常時接続はランサーズでやっても、全く上手くいかなかったです。オンラインでの集会は積極的に場をまわすMCを立てるなど、意識的に工夫しないと上手くいきません。現在では、「Remo」というツールを使用して、常時接続を行っています。
STRIVE株式会社 岩井:STRIVEでもリモートランチを実施しています。時々、Zoomに入っても誰もいなくて……(笑)
曽根:入って誰もいない、という体験があると次から参加しにくくなってしまいますよね。「Remo」は部屋が分かれていて、誰が参加しているかわかるのでおすすめですよ。
Retty株式会社 小花さん:Rettyでは全体会議や入社式、キックオフをオンラインで行いました。その時にコメントスクリーンを使ったら盛り上がりましたね。匿名でコメントがしやすい雰囲気もあり、1人10件くらいコメントができてました。
業務中のコミュニケーションに関してはやっぱりまだまだ課題が残りますね。
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曽根さんを筆頭に、ランサーズ社が実践する「スマート経営」。誰もが自分らしく働ける社会をめざすランサーズで、働き方のアップデートを常に考え続ける曽根さんだからこその視点で、これからのワークスタイルについてお話いただきました。
コロナによって社会が大きく変化する中、企業が生き残っていくためには働き方のアップデートが必要不可欠です。今回の曽根さんの話を参考に、ぜひ一度自社の働き方について考えてみてはいかがでしょうか。